親の所有する土地に家を建てる予定の方や、二世帯住宅を検討中の方には、土地の名義変更を行いたいと思っている方も多くいらっしゃると思います。
土地の名義変更には2つの方法があり、どちらかを選ぶ必要があります。
今回は2パターンの概要と、手続きの流れ、名義変更を行わない場合のリスク、節税対策に関しても紹介いたします。
是非、最後までご覧ください。
- 親名義の土地を名義変更するタイミング
- 親名義の土地を名義変更するポイント
- 親名義の土地を名義変更せず利用する場合のリスク
親から子へ土地の名義変更を行う2つのパターン
親から子へ名義変更を行う場合、「相続」or「生前贈与」2つの方法どちらかを選ぶ必要があります。
それぞれの方法や特徴を比べてみましょう。
亡くなった親の名義から変更する
亡くなった親の土地の名義を変更する方法は【相続】に当てはまります。
親が生きているうちに、親名義の土地へ子名義の住宅を建てて居住する事は可能です。
相続の場合、親が亡くなった時点で、遺言通りの相続を行う必要があります。
遺言のない場合、【遺産分割協議】を行い、土地の名義を誰のものにするのか、相続の権利がある全員で話し合う事となります。
相続にかかる費用
- 相続登記の費用
- 相続税
- 固定資産税
遺産分割協議
遺産分割協議はメールや電話で行う事も可能ですが、相続人全員の参加が必要です。
話し合いによって遺産分割の方法と相続の割合を決め、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は実印を押印して全員が1通ずつ所持します。
生きている親の名義から変更する
親名義の土地に家を建てる場合、【生前贈与】を行い、土地の名義変更を行ってから住宅を立てる事もできます。
生前贈与を行っておけば相続時にトラブルになる事も無く、住宅と土地の両方が子の名義となるため、安心して住宅を建てて住む事ができます。
生前贈与にかかる費用
- 贈与税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 手続きなどを専門家に依頼する場合の費用
親から子へ名義変更を行う手続きの流れ
親から子へ土地の名義変更を行う、手続きの流れを見てみましょう。
相続
法定相続人の確認
法定相続人にあたる人を確認し、全員で遺産分割協議を行う
遺言書の有無を確認
遺産分割協議の際、遺言書の有無・内容を確認する
相続財産を調査
相続財産の調査を行います。
土地以外にも資産となる預貯金や自動車なども合わせた財産の総額を、法定相続人で分割、又は遺言通りにわける事になります。
必要書類の収集
申請に必要な書類は以下です。
- 登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人(親)の戸籍謄本・除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人(子)の住民票・印鑑登録証明書
管轄の法務局へ申請
不足書類などの問題が無ければ、一般的には1~2週間で手続きは完了します。
生前贈与
贈与契約書の作成
贈与する人と贈与される人で契約を結びます。
口頭でも契約は成立しますが、名義変更手続きの際に「登記原因証明情報」という書類を用意する必要があります。
贈与契約書も登記原因証明情報に当てはまるため、契約の際に贈与契約書を作成しておくとスムーズです。
名義変更の登記
管轄の法務局で名義変更の登記を申請します。
登記の申請は専門家(司法書士)に依頼するのが一般的です。
名義変更に必要な書類は以下です。
- 登記申請書
- 権利書(登記識別情報/登記済証)
- 土地の固定資産評価証明書
- 登記原因証明情報(贈与契約書)
- 贈与者の印鑑証明書
- 受贈者の住所証明情報(住民票)
- 司法書士に委任する場合は委任状
【相続or生前贈与】どちらを選ぶべき?
土地や不動産を受け取る場合、一般的には、税の控除額が多い【相続】が適しているとされていますが、受け取る財産の合計額や家庭の事情によって、どちらを選ぶべきか判断する必要があります。
どちらを選ぶべきか、条件を見比べてみましょう。
相続が適している場合
土地を含む相続財産の合計額が基礎控除未満の場合
財産の合計額が基礎控除【3,000万円+600万円×法定相続人の人数】以下の場合、非課税で相続する事ができます。
土地など不動産の評価額を査定する場合は、税理士や不動産業者に相談をしましょう。
小規模宅地等の特例を利用できる
小規模宅地等の特例を利用すれば、相続した土地の評価額を最大で80%減額する事ができます。
亡くなった人が自宅として使っていた宅地等・個人事業として使っていた宅地・貸地、貸家など貸付用としていた宅地・会社として使っていた宅地など様々な条件があります。
判断が難しい場合は、税理士の方に相談する事をおすすめします。
詳しくはこちら
相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
生前贈与が適している場合
土地の評価額が2,500万円以下
生前贈与の際に、【相続時精算課税制度】を利用することで2,500万円までの財産を非課税で受け取る事ができます。
また、2024年から年間110万円の基礎控除枠が新設されました。
年間110万円までは2,500万円の枠を使わず非課税で贈与を受ける事ができます。
相続人が複数いる
相続人が複数人いる場合、土地を含めた財産を相続人で分割する事になります。
住宅が子の名義でも、土地を分割して相続しなければいけなくなってしまうと、最悪の場合、家を手放す事となってしまいます。
生前贈与を行い、土地を子の名義にしておく事でトラブルを避けることができます。
将来的に土地の資産価値が上がることが期待される
【相続時精算課税制度】を利用すると、贈与時の土地評価額が固定されます。
将来的に土地の評価額が上がる事が予想される場合は、生前贈与を行った方がお得です。
確実に贈与を受けたい
土地以外に分割する財産がない、または土地が大きな割合となる場合は、遺言書があっても遺留分等の理由で、相続時に財産を分割しなければいけなくなってしまう可能性もあります。
生前贈与を行っておけば確実に名義変更が行えるため安心です。
名義変更を行わないとリスクがある?
第三者に所有権を主張できない
親名義の土地に住宅を建てて住む場合、担保としてお金を借りたり、売却を行う事はできません。
遺産分割協議で土地を相続を約束されていても、相続登記で名義変更を行っていないと、他の法定相続人に借金などがあった場合、土地を差し押さえられてしまうこともあります。
相続人同士のトラブル
親名義の土地に子が住宅を建てた場合、相続時に住宅を手放さなければいけなくなってしまう恐れがあります。
相続は土地を含めた全ての財産を法定相続人で分割する事になります。
遺産分割協議で住宅の建つ土地の相続を主張しても、相続人全員の賛同が無ければ相続が難しくなってしまいます。
2024年4月より相続登記が義務化
相続が発生したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければ、10万円以下の過料を課される恐れがあります。
詳しくはこちら
法務省:相続登記の申請義務化特設ページ
生前贈与の場合に節税できる制度
生前贈与を受ける際は、相続時精算課税制度か暦年課税制度のどちらかの課税方法を選択する必要があります。
相続時精算課税制度
贈与者(60歳以上)の父母または祖父母から、受贈者(18歳以上)の子や孫に対して生前贈与をするとき、2,500万円までは非課税、2,500超える部分については一律20%の税率で贈与税を課税する制度です。
また、年間110万円までは基礎控除され、何度も控除が可能です。
年齢などが条件の対象となる場合は、お得な制度といえます。
詳しくはこちら
国税庁:相続時精算課税の選択
暦年課税制度
暦年課税制度は年間(その年の1月~12月)110万円まで非課税で贈与を受けられる制度です。
回数に制限は無く、何度も利用が可能ですが、一度、暦年課税制度を選択すると相続時精算課税制度を利用する事はできません。
年齢制限や贈与者の制限がないため、相続時精算課税制度の条件に当てはまらない場合は、暦年課税制度を利用する事になります。
詳しくはこちら
国税庁:相続時精算課税の選択
状況に合わせて適切な手続きを!
今回は親から子に土地の名義変更を行う際の注意点や、行わない場合のリスク、贈与時の節税方法に関して紹介いたしました。
贈与や相続は、年齢や税金の金額だけでなく、家庭の事情や将来を考えて方法を選択する必要があります。
親族と話し合いを行う際は、税理士の方へ相談する事もおすすめします。