断熱の性能には基準がある?等級による違い、断熱基準が高い家で暮らすメリット・デメリットを解説
2025年4月から、新築住宅において「省エネ基準適合」の義務化が決まっています。
新築住宅の建築を考えている方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
さらに、2030年までにZEH水準の住宅の基準が引き上げられるといわれています。
省エネ性能の高い住宅と関連性が高いのが「断熱の性能に関する基準」です。
「断熱の性能にはどのような基準があるの?」
「断熱性能が高い住宅の特徴はあるの?」
「断熱基準が高い住宅で暮らすメリット・デメリットとは?」
省エネ性能の高い住宅が注目される中、新築住宅の選び方に悩む方も多いでしょう。
今回の記事では、断熱の性能にはどのような基準があるのかを解説します。
断熱の等級による違い、断熱基準が高い家で暮らすメリット・デメリットも紹介します。
断熱の性能についての理解を深め、省エネ性能の高い新築住宅を建築しましょう。
この記事のポイント
- 断熱性能の基準
- 断熱の等級による違い
- 断熱基準が高い家で暮らすメリット・デメリットをご紹介します。
目次
断熱性能とは
断熱性能とは「住まいからの熱の逃げやすさ」と「住まいへの日射熱の入りやすさ」によって決まる指標です。
住まいからの熱の逃げやすさは「UA値(外皮平均熱貫流率)」で表され、住まいへの日射熱の入りやすさは「ηAC値(冷房期平均日射熱取得率)」で表されます。
UA値とηAC値の算出方法は、以下のとおりです。
【UA値とηAC値の算出方法】
・UA値:(「屋根・天井から逃げる熱」+「外壁から逃げる熱」+「窓から逃げる熱」+「床から逃げる熱」)÷外皮面積の合計
・ηAC値:(「屋根・天井に入る日射熱」+「外壁から入る日射熱」+「窓から入る日射熱」)÷外皮面積の合計
※外皮:建物の外側と内側の境界部分
UA値もηAC値も、数値が小さいほど断熱性能が高いといえます。
UA値とηAC値を小さくすることで、断熱性能を向上させられます。
断熱性能を向上させるためには「窓」「断熱材」「庇・軒」を工夫するのが効果的です。
具体的には、以下のように対策できます。
【断熱性能を向上させる対策】
・構造体:鉄筋やコンクリートよりも熱が伝わりにくい無垢材を採用する
・窓:複層ガラスと樹脂製サッシを選ぶ/日射熱を通しにくいLow-Eガラスを採用する
・断熱材:断熱材の厚みを持たせる/熱伝導率の値が小さい断熱材を選ぶ
・庇や軒:庇や軒を設けて日射熱が入るのを防ぐ
【参考】
国土交通省|建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ラベル項目の解説 断熱性能
住宅の断熱基準とは
住宅には、断熱基準が設けられています。
断熱基準は、1〜7の7つに分類された「断熱等級」で定められており、数値が大きいほど断熱性能が高いのが特徴です。
ただし、日本は地域によって気候に違いがあるため、8つの地域区分が設定されています。
断熱等級と地域区分によって、UA値とηAC値の基準が設けられているのです。
断熱等級の値が大きいほど、夏は涼しく冬は暖かい快適な暮らしを実現できます。
2024年4月からは、住宅の販売に関する広告に「省エネ性能ラベル」が表示され、省エネ性能の情報を理解しやすくなりました。
省エネ性能ラベルには「エネルギー消費性能」「断熱性能」「目安光熱費」などが書かれているので、家選びの際に注目してみてください。
【参考】
国土交通省|建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ラベル項目の解説 断熱性能
断熱性能が高い住宅の特徴3選
断熱性能が高い住宅の特徴は、以下の3つです。
一年中快適に暮らすためにも、断熱性に優れた住まいの特徴を押さえましょう。
夏は涼しく冬は暖かく過ごせる
断熱性が高い住宅は、夏は涼しく冬は暖かく過ごせるのが特徴です。
外の日射熱を室内に入れないため、夏は日差しによる部屋の温度上昇を抑制できます。
冬は暖房器具で暖めた空気を外に逃がさないため、寒さに悩まずに快適に過ごせます。
気温の変化による影響を受けず一年中快適な暮らしができるのも、断熱性能が高い家の魅力です。
冷暖房効率が向上する
断熱性能が高い住宅は、冷暖房効率が向上します。
季節の変化がある日本では、冷暖房を使用する家庭も多いでしょう。
暑い夏は冷房を使用し寒い冬は暖房を使用するなど、暑さや寒さを和らげるための対策は重要です。
ただし、断熱性能が低い住宅で暮らす場合は、室内と室外で熱の移動が生じます。
冷房や暖房を使用しても、部屋で快適に過ごせないこともあることを押さえましょう。
また、冷房使用時に設定温度よりも低くしたり、暖房使用時に設定温度よりも高くしたりすることで、エネルギー消費量が増えてしまいます。
住まいの断熱性能が優れていれば、必要以上に冷暖房を稼働させることがないため、エネルギー消費量を抑え冷暖房効率を上げられます。
部屋の温度差をなくせる
断熱性能が高い住宅は部屋の温度差をなくせるため、どの部屋にいても不快感やストレスを感じずに快適に過ごせます。
家そのものの断熱性能が優れているため、部屋ごとの温度差を最小限にできます。
夏の冷房使用時、リビングは涼しいのに寝室は暑いと、良質な睡眠ができずストレスを感じるでしょう。
また、冬の暖房使用時、脱衣所・浴室・トイレが寒いと、血圧が急激に上下することでヒートショックを発症する恐れもあります。
ヒートショックが重症化すると、脳卒中や脳梗塞、心筋梗塞で救急搬送されることも。
家族の健康を守れるのも、断熱性能が高い住宅の特徴です。
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断熱基準が高い住宅で暮らすメリット
断熱基準が高い住宅で暮らすメリットは、以下のとおりです。
断熱性能に優れた住まいを検討している方は、参考にしてみてください。
住まいの寿命が延びる
断熱基準が高い住宅は、通常の住宅に比べて住まいの寿命が延びるのがメリットです。
暮らしを送る上で悩むポイントの1つは、窓の結露やカビの発生。
一方、断熱基準が高い住宅は断熱性能の高い窓を採用しているため、窓からの熱の移動を抑制できます。
熱の影響を受けにくい窓を採用しているため、窓ガラスの結露に悩むこともありません。
結露が生じるだけではなくカビの繁殖も防止できるので、住居内に使用されている建材の機能が低下するのを防げます。
防音性を高められる
断熱基準が高い住宅は断熱性が優れているだけではなく、同時に防音性も高められます。
住居内で発生する音を室外に漏らさず、室外の音を室内に取り込まないため、生活音に関するストレスを感じずに暮らせます。
掃除をする際、音漏れを気にして掃除機を使用して良いか悩んでしまうこともあるかもしれません。
また、子どもの笑い声やペットの鳴き声などが気になる方もいるのではないでしょうか。
環境省「令和3年度騒音規制法等施行状況調査の結果について」によると、令和3年度における騒音に関する苦情の件数は19,700件。
「家庭生活」における騒音に関する苦情件数は、全体の7.1%を占める194件です。
生活騒音は、近隣住民とのトラブルの原因になることもあります。
近隣住民とのトラブルが起きると、住みづらさを感じる原因にもなるでしょう。
防音性の高さも魅力的な断熱基準が高い住宅で暮らし、近隣住民と良好な関係性を築きましょう。
【参考】
環境省|令和3年度騒音規制法等施行状況調査の結果について 騒音規制法等施行状況調査の詳細
家族の健康に配慮した暮らしができる
断熱基準が高い住宅なら、家族の健康に配慮した暮らしができます。
夏も冬も快適な住空間を維持できるので、気温の変化による健康被害から家族を守れます。
たとえば、冬場の健康被害で心配されるのが「ヒートショック」です。
ヒートショックは高齢者や生活習慣病を抱える方に起こりやすく、急激に血圧が上下し目まいや立ちくらみが生じる健康被害です。
重症化すると、脳卒中・脳梗塞・心筋梗塞などが生じることもあります。
断熱性能が高い家なら部屋の温度差を生じないため、ヒートショックのリスクを低減できます。
断熱性能に優れた住まいで、家族の健康に配慮した暮らしを実現させましょう。
冷暖房設備にかかる電気代を節約できる
断熱基準が高い住宅は、冷暖房設備にかかる電気代を節約できるのが魅力です。
夏は冷房、冬は暖房を使用している家庭も多いのではないでしょうか。
省エネ対応の冷暖房設備を使用したとしても、経済的な負担はあるものですよね。
新築住宅を建築する際、イニシャルコストである建築費用を抑えるのを優先しがちです。
ただし、毎月かかる電気代などのランニングコストも考慮し、冷暖房設備にかかる電気代を抑えて家計に優しい暮らしを実現しましょう。
断熱基準が高い住宅で暮らすデメリット
断熱基準が高い住宅で暮らすデメリットは、以下のとおりです。
後悔しない家選びをするために、デメリットまで理解しておきましょう。
内部結露が生じやすくなる
断熱基準が高い住宅は、内部結露が生じやすくなるのがデメリットです。
内部結露とは、室内の暖かい空気が天井裏・壁内・床下などに入り、結露が生じる現象です。
内部結露が生じると、天井裏・壁内・床下の断熱材にカビが繁殖したり、構造体が劣化したりするなどの悪影響を及ぼします。
さらに、湿気があり暖かい空間を好むシロアリが発生する恐れも。
内部結露を生じさせないために、湿気がこもらないように湿度を調節するのが重要です。
ただし、断熱材の施工不良によって内部結露が生じることもあります。
新築の建築を依頼する場合は、施工実績が豊富な信頼できる業者を選びましょう。
湿気がこもることもある
断熱性能に優れた住宅は、高気密高断熱である点も魅力です。
高気密高断熱は、断熱性と気密性に優れています。
断熱性は、住宅内と外で熱の移動を抑制する性能を指します。
一方で気密性は、住宅の隙間から空気の出入りを抑制する性能です。
住宅の隙間をなくし気密性を高めているため、適切に換気を行わなければ湿気がこもりやすくなります。
高気密高断熱の住宅を建築する際は、換気計画も入念に行いましょう。
建築費用が高くなる傾向がある
断熱性能を重視して新築住宅を建築する場合、建築費用が高くなる傾向があります。
断熱性能を高める対策は複数ありますが、断熱材を設置するのも有効です。
しかし、ハイグレードの断熱材を採用すると材料費が高くなるため、建築費用も高額になってしまうのがデメリット。
ただ、国や地方自治体の補助金・助成金を活用できる場合もあります。
断熱性能を重視しつつ価格を抑えて新築住宅を建築したい方は、国や地方自治体の補助金を活用しましょう。
以下記事では、栃木市の住宅で活用できる補助金を紹介しています。
栃木市で新築住宅の建築を検討している方は、補助金を活用し費用を抑えましょう。
断熱性能が高い住宅を建築する際の3つのポイント
断熱性能が高い住宅を建築する際のポイントは、以下の 3つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
断熱性能の高い窓を採用する
断熱性能が高い住宅を建築する際、断熱材のグレードだけではなく、窓の断熱性能にも着目しましょう。
断熱性能に優れた住宅は、部屋に熱がこもると放出しにくいことも。
部屋に熱がこもらないように、断熱性能が高い窓を採用すると安心です。
断熱性能の高い窓の採用を推奨する理由は、建物の中でも窓からの熱の移動量がもっとも多いためです。
国土交通省「省エネ住宅」では、冷房使用時に室外から室内に入る熱の割合、暖房使用時に室内から室外に逃げる熱の割合が解説されています。
それぞれの数値は、以下のとおりです。
【冷房使用時に室外から室内に入る熱の割合と暖房使用時に室内から室外に逃げる熱の割合】
(1)冷房使用時に室外から室内に入る熱
・開口部:73%
・屋根:11%
・換気:6%
・外壁:7%
・床:3%
(2)暖房使用時に室内から室外に逃げる熱
・開口部:58%
・屋根:5%
・換気:15%
・外壁:15%
・床:7%
【参考】
換気計画も重視する
断熱性能が高い住宅を建築する際、プランニング時に換気計画も重視しましょう。
断熱性能が高い住宅は、湿気がこもりやすかったり内部結露が生じたりするなど、住み心地の悪さを感じることもあります。
現在、シックハウス対策として全建物に機械換気設備を設置するのが義務づけられています。
住宅の場合は、24時間換気システムを設置しなければなりません。
ただし、24時間換気システムには「第1種換気システム」「第2種換気システム」「第3種換気システム」の3種類があります。
それぞれ特徴やメリット・デメリット、価格帯が異なるので、住宅のプロに相談しながら適切な換気システムを導入しましょう。
【参考】
断熱に関して知識や経験が豊富な業者に依頼する
断熱性能が高い住宅で快適に暮らすためには、施工業者選びも重要です。
夏は涼しく冬は暖かい快適な住空間で過ごすためにも、断熱に関して知識や経験が豊富な業者に依頼しましょう。
新築住宅の建築を行う業者によっては、断熱材に関する知識が乏しいことも。
適切な断熱対策を行わなければ、施工不良が生じる恐れもあります。
夏の暑さや冬の寒さを感じず一年中快適に過ごすために、公式ホームページなどで施工業者の実績をチェックした上で、新築住宅の建築を依頼するかを決めましょう。
【施工事例】「高気密高断熱」と「木の温もり」を両方叶えたこだわりの住まい
こちらは、栃木市T様の平屋住宅です。
玄関共有型でキッチン分離の二世帯住宅。
夏は涼しく冬は暖かい、高気密高性能な住まいが完成しました。
さらに、木の雰囲気や使い方を大切にしたいT様の希望を伺い、こだわり抜いた無垢材を使用しています。
親世帯と子世帯で、異なる無垢材を採用しています。
親世帯のLDKには、勾配天井に「八溝杉」を使用し、床には「オーク」を使用。
子世帯のLDKには、梁や床に「ウォルナット」で統一しています。
新築住宅を建築する際は、プランニング時に断熱性能の基準を確認しましょう!
今回は、断熱の性能にはどのような基準があるのかを解説しました。
等級による違い、断熱基準が高い家で暮らすメリット・デメリットも紹介したので、断熱性能に優れた住宅で暮らすイメージが湧いたのではないでしょうか。
断熱性能の高い住宅での暮らしは、夏でも冬でも快適に過ごせるのが魅力。
ただし、断熱性能に優れた新築住宅の建築を依頼する際は、業者選びも重要です。
断熱に関する知識や施工実績が豊富な施工業者を選びましょう。
木の花ホームは、栃木県で「ずっと、いい家」をコンセプトに、地域密着で注文住宅の建築を行っています。
「住むほどに、好きになる」がコンセプトの、無垢材にこだわった注文住宅「無垢のめぐみ」を提供させていただいております。
現在、モデルルームへの見学も受付中です。
無垢材で注文住宅を検討中の方は、ぜひモデルルームにご来場ください。
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